かながわアートプレス
January 2008
芸術活動支援のページ
伝統芸能ワークショップ 〜人材育成事業の現在と今後の方向性〜
 近年、生活の中で伝統芸能に触れる機会が少なくなっているため、特に青少年を対象とした体験型のワークショップ事業の重要性が大きくなってきています。ここでは神奈川県が昨年度からスタートさせた「かながわ伝統芸能ワークショップ」事業をご紹介します。
ワークショップの様子1 ■伝統芸能人材の育成に向けて
 伝統芸能は、地域の生活や習慣の中から生まれ、その風土や歴史に育まれ、幾世代にもわたり、大切に受け継がれてきた、日本が世界に誇る文化芸術です。
 しかし、近年の急激な社会の変化により、伝統的な文化や芸能に私たちが触れる機会が減少し、特に後継者の不足が問題になってきています。
 神奈川県では、伝統芸能の普及・振興を図るため様々な施策を行ってきているところですが、子どもたちを対象とした体験型ワークショップを開催し、伝統芸能に関心をもってもらう“きっかけ”を提供し、ひいては伝統芸能人材の育成につながっていってほしい、そのような思いから、「かながわ伝統芸能ワークショップ」を平成18年度にスタートさせました。
ワークショップの様子2 ■これまでの実績
 現在、「日本舞踊を通じて学ぶ“和”の作法」(以下、日舞)と、「三味線にトライ!」(以下、三味線)という2本立てで、それぞれ文化芸術団体等(注1)と協働しながら、ワークショップを開催しています。平成19年度は、県内各地の子どもたちがワークショップに参加しやすいように、県内各市と連携しながら、複数会場で計画・実施しています(三味線についてはこちらのページをご参照ください)。(注2)
■参加者からの声
 多かったご意見をまとめると、日本文化に触れる機会を持つことができて良かった、学校ではなかなか教わらないことを学ぶことができて良かったという2点でした。保護者の方や受講されたお子さんから直接お礼や感謝のはがきやおたよりもいただいています。
■講師からの声
 「子どもたちが一緒に、励まし合い、時には競い合い、楽しそうに学ぶ姿に感動しました。とかく現在の日常生活では触れることの少なくなってきている伝統芸能が、日本の文化や生活に深く結びついていることを、県民の皆様方にご理解いただけるように、今後一層、力を注いでいきたい」という感想をいただきました。
■効果
 文化芸術団体等と事業を協働して進めていくことで団体等のミッションも果たされる相乗効果が生まれ、また、県内各市町村と連携していく中で、市町村のモデル事業として先行的な役割を果たすことができました。
 また、学校へのアウトリーチ事業以外に、県内の文化施設等で地域の子どもたちを対象とした体験型ワークショップの需要が多くあることがわかりました。
■今後の方向性
 アンケートなど県民の皆様の声を参考とし、引き続き、文化芸術団体等と協働し、県内各地の地域資源を活かしつつ、県内各市町村とも連携を図りながら、県内各地で伝統芸能に触れる機会を全体として増やしていき、地域文化の振興につながるようワークショップの充実・強化に努めていきたいと考えています。
注1 協働相手先団体
日舞:(社)日本舞踊協会神奈川県支部
三味線:伝統芸能企画制作オフィス古典空間

注2 開催会場と参加者実績数値
平成18年度
日舞:県立青少年センター(横浜市)参加者21人
三味線:神奈川県民ホール(横浜市)参加者17人
平成19年度
日舞:市営東町スポーツセンター(厚木市)参加者24人
かなっくホール(横浜市)参加者22人
逗子文化プラザホール(逗子市)参加者23人
*各会場とも応募者多数のため抽選を実施しました。

注3 伝の会
杵屋邦寿、松永鉄九郎が平成元年に結成した長唄三味線のユニット。古き良き長唄の魅力を多くの方々に伝えていきたいとライブコンサートをこなす傍ら、次世代への普及にも熱心で、学校へのアウトリーチの実践など幅広く活動しています。

平成19年度(第56回)神奈川文化賞未来賞受賞 岡田利規氏インタビュー
岡田さんの写真1 神奈川県出身で、1997年に演劇ユニット「チェルフィッチュ」を旗上げし、以来横浜を拠点に演劇活動を続けている劇作家・演出家の岡田利規さん。2005年には「三月の5日間」が第49回岸田國士戯曲賞を受賞、また小説家としても作品を刊行し、さらには海外の演劇フェスティバルにも招聘されるなど、近年活躍の場を大きく広げています。今回、岡田さんが第56回神奈川文化賞未来賞を受賞されましたので、次回作の稽古場でお話を伺いました。
受賞のご感想をまずはお聞かせいただけますか?
岡田さんの写真2  僕は生まれと育ちは横浜で、住んでいるのもずっと神奈川なので、こういう賞をいただけるのは励みになるしうれしいです。東京ではなく自分が育った場所から創造活動を行なっていきたいと思っているので、その思いを新たにしたって感じですね。
 横浜で活動してきてよかったのは、焦らされたり変に消費されたりすることもなく、初期の段階から十分栄養を蓄えながら創作活動に取り組むことができたことです。未熟な時期に栄養をいっぱい摂って育つようなことは、東京ではすごく難しいことなので、最大のメリットでしたね。神奈川で活動を始めていて、東京にすぐに出なきゃいけないという漠然とした焦りのようなものを感じている若いアーティストがいたら、僕はそういうことは心配しなくていいと言いたいです。

1997年に岡田さんが横浜で立ち上げた「チェルフィッチュ」というユニットはどのようなものですか?
 僕が主宰する「劇団」です! 当初はユニット的な部分もあったんですけど、今は俳優も4人いてスタッフもいますし、横浜で育った劇団と言うことができます。
 現在もチェルフィッチュとしての2年半ぶりの新作公演の稽古を横浜で行なっています。結果的にこの2年半は、海外ツアーも含めて再演作品を繰り返し上演してきたのですが、再演を重ねると作品を練ることができますし、ものすごく恵まれた状況だと思います。
劇作・演出だけでなく小説家としても活躍されています。戯曲とはまた大きく異なる文体で小説を書かれていますが?
 今自分自身が創作の欲求を持っているのは演劇と小説です。たぶん僕はいつも「時間」を作品のテーマにしているんですけど、同じテーマで小説を戯曲のような文体で書いても何の意味もないと思っているんです。
神奈川の演劇といえば、県立青少年センターがありますが、今度横浜市中区山下町に県立新ホール「神奈川芸術劇場」ができます。この劇場にどのようなことを期待していますか?
 県立青少年センターで見た演劇の思い出といえば、南アフリカからやってきたカンパニーによる「モローラ」(2005年 神奈川芸術文化財団主催)ですね。あれは非常によかったです! ああいうのを見せてもらえると「もうたまらん」って感じですね(笑)。
 新しい劇場には、どれだけ自立的なキュレーション(企画立案)力によって刺激的なプログラムを作り出してくれるかということに、純粋に期待しています。この劇場は芸術監督制を敷くのがいいと思うんですけど、その人に責任と権限を一任することで、芸術監督が心から本当に県民に見せたいものを舞台にかけられるようにして、その結果、お客をびっくりさせるようなおもしろいことになればいいなあと思います。
 もちろんチェルフィッチュでも公演をやりたいですね。新作初演をこの劇場でやり、そのあと神奈川・横浜で作った作品として、国内や海外へ発信して行く流れを僕らのカンパニーとして作れたらいいなって思います。
聞き手・文:編集部 写真:青柳 聡

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