かながわアートプレス
September 2007
芸術活動支援のページ
県立の新ホールの整備内容を紹介します(その3)
県が横浜の山下町地区に整備を進めている新ホールについてご紹介するこのコーナー。今回は、小劇場として十分な機能を備え、県民ホール大ホールで上演される演目の本番さながらの稽古が可能な大スタジオと、作品の作りこみをするのに十分な機能を備えた中・小のスタジオについてご紹介します。
大スタジオ
 創造型劇場として、良質な演目を提供するためには、演目を作り込むための空間が必要不可欠です。
また、「小劇場」としての機能も備えるべく、県立新ホールはこんな「大スタジオ」を整備します。
  • 稽古場、小劇場、イベント会場などさまざまな用途に使用できる大型(400・)の多目的スタジオ
  • 稽古場としては県民ホール大ホールの主舞台と同じ大きさを備え、県民ホール大ホールで上演される作品の稽古に対応
  • 小劇場としては、220席の可動席と約140・の舞台、標準的な照明・音響設備を備え、演劇ダンスなどの発表、公演に対応
【機能】
スタジオサイズ:最大20m×22m 約400・ 客席:可動席220席 舞台・音響・照明:小劇場として標準的なシステムを装備 楽屋:4室(他のスタジオと共用)
大スタジオの使用イメージと平面図
中・小スタジオ
創造型劇場として、演目を作り込んでいくためには、稽古場が必要です。県立新ホールは「大スタジオ」とは別に、こんな「中・小スタジオ」も整備します。
  • 中スタジオは、メインホールで上演される作品の稽古に対応できる広さ(約230・)を備えた多目的スタジオ
  • 小スタジオは、3階と8階に1室ずつ。それぞれ大スタジオの舞台とほぼ同じ大きさを備え、小規模な演劇、ダンスなどの稽古場として最適
  • 中スタジオ・小スタジオは、ともに簡便な照明、音響設備を備えられ、各種のイベントや発表会など多目的に利用できるほか、小規模な公演も可能
【機能】
スタジオサイズ:中スタジオ 最大17m×14m 約230・ 小スタジオ 最大14m×10m 約140・
舞台・照明・音響:固定バトンや電源などを備えており、必要に応じて簡便に、吊りもの、照明、音響設備を設置できるシステム
他:各スタジオ毎に、更衣室2室
問い合わせ先 県民部文化課文化企画班 電話045−210−3804(直通) FAX045−210−8840

神奈川県のアートNPOの活動とその魅力〜県との協働の場合〜
学校に、演出家、俳優、ダンサーが出向いて、身体表現の授業が行われています。
これは神奈川県とアート系NPO法人との協働事業で実現しました。
神奈川県との協働によるアート系NPO法人の活動の一例をご紹介します。
県とアートNPOの「協働」
神奈川県は、アートNPOの活動支援を活発に行っています。今回は、その相手方のひとつであるNPO法人STスポット横浜(以下、STスポット横浜)の例を紹介します。

STスポット横浜は、神奈川県、神奈川県教育委員会と協働で「アートを活用した新しい教育活動の構築事業」を展開しています。この事業は、行政からNPOへの委託により実施しているのではなく、NPOからの提案を受け、県とNPOが協働して取り組んでいるところがユニークな点です。

STスポット横浜が、県の「協働事業負担金」(注※)に応募したのが、この協働事業の始まりといえます。県の審査を経て採択されれば、最長で5年間の経費を県の基金が負担するという仕組みを使って、協働事業を提案したところ、助成が決定し、平成16年度から県との協働事業がスタートしました。
(注※)「協働事業負担金」 平成13年4月、神奈川県が設立した「かながわボランタリー活動推進基金21」の中の、3つのプログラム、「協働事業負担金」「ボランタリー活動補助金」「ボランタリー活動奨励賞」の一つ。文化事業に限ることではなく、あらゆるジャンルの事業に適用されている。

STスポット横浜の活動
STスポット横浜が県と協働で行っているのは、アーティストを学校に派遣して授業を行うというもので、STスポット横浜はアーティストと学校とをつなぐコーディネーターの役割を果たしています。

授業風景1アーティストを教育現場に派遣する事業は、これまでにもありましたが、委託ではなく、行政との協働により、事前準備や当日の立ち会いなども含め、きめ細かく対応している点がこのSTスポット横浜の特徴で、この分野のパイオニアであると言えます。

簡単につなぐといっても、学校ごとに、授業でアーティストを必要とする理由やアーティストに期待する内容が異なるため、授業を行うアーティストと事前に学校に出向いて生徒の様子を観察したり、担当の先生と授業の狙いについて綿密な打ち合わせを行います。授業当日は、アーティストが行う授業をサポートし、生徒が授業に集中できるよう裏方に徹します。非常に骨の折れる仕事です。

アートを学校教育の場で活用したいと学校の先生が思っても、これまではなかなか実現しませんでした。アートと教育現場の両方に関心のあるアーティストが少ない、アートの現場と教育現場との交流の機会が少ない、などの理由のほかに、なによりも双方をつなぐコーディネーターが圧倒的に少なかったのです。この双方をつなぐ役割を担うことにより、STスポット横浜は、平成18年度に小学校、中学校、高校、養護学校など全部で16校、17科目で67回の授業を実施しました。授業教科名は、小学校は総合的な学習の時間や図画工作、中学校では国語や美術、高校では演劇等の学校設定教科や芸術などとなっています。ほかにも先生のためのワークショップも開いています。

授業風景2「例えば、クラスでうまく周りにとけ込めなかったり不登校気味だったりする子どもがこの授業で意外な一面を見せ注目され、結果としてクラスでの立ち位置が良い方向に変わったという例があります。先生とは違った大人の目が入ることにより、子供のコミュニケーション能力に気づいたり強化されれば、常に苦労されている先生にとっても新たな発見になるのではないでしょうか」とSTスポット横浜アート事業部主任学芸員の松尾子水樹さんは言います。

この活動は今後どのように発展していくのでしょうか。「子供は学校にだけいるのではありません。授業以外の放課後、土・日に美術館の広場でも取り組みはできます。地域の文化施設の人たちと連携できたらいいなと思います」

行政との協働により事業を実施する過程で、取組の対象や範囲は広がってきています。今年は、幼稚園へのアーティスト派遣が実現しました。今後、この協働事業をきっかけとしたネットワークが広がっていくにつれ、STスポット横浜の取組への期待は、ますます大きくなりそうです。
(取材協力:NPO法人STスポット横浜/松尾子水樹、小川智紀 取材執筆:結城美穂子)

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