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November 2006
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アートの実務 応援特集1 広報
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展覧会や演奏会、公演をする際には、実現までにさまざまな仕事がある。
企画をし、その企画を実現するために、出演交渉や出品交渉をし、出演(出品)料を決める。 入場料をきめてチケットを売り出す。それを告知するためのチラシや葉書をつくる。 雑誌や新聞で取り上げてもらうために、マスコミに企画内容を告知する書類を送る (一般にプレスリリースという)。 今回はこの広報について考えてみた。
■プレスリリースのつくり方
「チラシ」や「ポスター」はあらゆるところで目にするが、「プレスリリース」は限られた人にしか配布されないため、現物を見た事のない人も多いのではないだろうか。これは、一般に情報が公開される前に、記事として紹介してくれる可能性のある雑誌社や新聞社などに配布される “対外的に公表されることを前提とした”企画書のことだ(ちなみにプレスリリースを書くのは制作者もしくは広報)。“対外的に公表されることを前提とした”とわざわざ特記したのには理由がある。
それに対して「プレスリリース」は、メディアを通じて一般の観客に伝わるものなので、確定した公演データを中心にして、
体裁はさまざまだが、よく見かけるのはA4サイズの用紙を用いて5〜10頁程度で構成されたものだ。細かな留意点、例えば、表紙には問い合わせ先・担当者名(ふりがな付き)を明記し、タイトルにはキャッチコピー(その公演の一番のセールスポイントをコピーにしたもので、記事として取り上げる時に必ず付けて欲しいうたい文句や公演を紹介する時の切り口)を付ける。内容紹介はそのまま抜粋して記事に引用されてもいいように簡潔なもの(100字程度)と詳細なものの両方を付ける。主役や演出家のコメントを入れるなど魅力的な記事がつくれるような情報提供を心がけるetc.はいろいろあるが、きりがないので、はじめて作る時はいくつかサンプルを入手して自分なりに工夫してみるのが近道だろう。
(坪池栄子)
坪池栄子 プロフィール
'55年生まれ。(株)文化科学研究所研究プロデューサー。「ぴあ」演劇記者を経て、'95年より(財)地域創造の発行する「地域創造レター」「雑誌地域創造」の編集プロデュース、'04年より独立行政法人国際交流基金の運営する「Performing Arts Network Japan(http://www.performingarts.jp)」の編集プロデュースを手がける。
横浜国立大学に着任した劇作家・唐十郎のゼミから生まれた劇団「唐ゼミ」。
学生の活動(ゼミ)としてスタートをきり、そこから一歩踏み出した活動をはじめている。 主宰・演出兼制作担当の中野さんに、広報や交渉をどうしていったか、 話しを聞いてみた。 ──劇団「唐ゼミ★」は、横浜国立大学における唐十郎教授のゼミナールから生まれ出た、ユニークな出自をもちます。まずその経緯から聞かせてください。
中野 97年に専任教授として招かれた唐さんのゼミが始まったのは、2000年度からでした。はじめはゼミナールで何をやったらいいのか、手探りの時期が続いたそうですが、結局、実地に芝居を作ってみるところに落ち着き、研究室に狭い舞台を作り上げ、01年1月に唐さんの処女戯曲を上演したんです。その年の四月からゼミに加わった僕にとっては、ゼミナールの方向性がそっちのほうに定まったのはとてもラッキーでした。僕は最初から演出がやりたくて参加しましたからね。その後、年に二度ずつ公演を打ちながら、05年の唐さんの退任のとき、ゼミがなくなるわけで、劇団名をどうしようかとなった。ですが実はその時すでに、05年9月〜10月の新国立劇場での公演(注1)が決まっていたこともあって、名前のあとに「★」マークをくっつけましたが、基本的に「唐ゼミ」のままやっていくことにしたんです。
──ゼミナールの延長を卒業して、独立した劇団になると、制作的にも、新しい仕事ができてきたのでは?
中野 六回目くらいから、少しずつ学外でも公演を打つようになって、いろいろなことを学んでいきましたね。チラシの折り込み(注2)を覚え、プレスリリース(注3)ってものを知り、顔なじみのお店にポスターを貼ってもらうことを勉強しました。独立して2回目の公演がこの9月〜10月にあったんですけど、身に沁みたのは資金的な苦しさですね。特に地方で公演するというのはこれだけたいへんなんだと。でも、その土地で呼んでくれる方、面倒みてやろうといってくれる方がいることの方が大事ですから、やってみようとみんなで決めたんです。今回は少し蓄えもあったんですが、この問題をこれからどうするか。だからこれからが僕らの本当の始まりということなんだと思います。──情報誌や新聞社に、挨拶にまわったりはしたんですか?
中野 向こうから来てもらっちゃったりしました(笑)。唐さんが大学で教えていることが記事になれば、その取材のときご挨拶したり、また唐組の芝居を見に行けば、終演後に唐さんを通して演劇担当の記者の方と顔をつないだり(注4)という具合でしたね。そのあたりは通常の劇団のスタートとは違う、恵まれたものだったという認識はあります。
──9、10月の公演は、横浜のほかに、東京、新潟、京都にテントを持って初めて行かれましたよね。テントを建てる場所を探すのもたいへんかと思うのですが。許可がなかなかおりるもんじゃないでしょ?
中野 唐ゼミのスタートと第一回の横浜トリエンナーレが同時期だったんです。国大の先生でトリエンナーレに出品された方を通して、横浜市の行政の人と知りあいになったんですね。ですから、市内でやるときはわりと優遇していただいている。東京の場所は、唐さんの知りあいの知りあいを訪ねて、そのまた知りあいの方をご紹介ねがってと、そういう流れでお借りすることができました。交通機関からのアクセスやテントを設営する安全性、そしてもちろん景観のよさ、これらの条件を同時に満たす場所を見つけだすことは、たいへんでもあり、テントの醍醐味でもあります。
──これからの課題は。
中野 ふたつあります。まず集客の問題がひとつ。これまでの観客リストを眺めていると、やはり学生のお客さんが多い。ですから今回のような9、10月の公演では不利だということが今回はっきりしました。テント芝居には少し向いていなくても、7月の始めや、11月の公演の方が宣伝も行き届くのだということがわかりました。チラシの作り方でも、例えば次回から、演劇関係者だけでなく様々なジャンルの方に応援のメッセージを寄せて頂いたらいいんじゃないだろうか、などという意見が出ています。次に、これは集客にも関わりのあることですが、やはり資金的な問題。最近の演劇界ではいわゆる助成金をもらって公演活動を行うことが主流になってきていますが、これはいまの唐ゼミ★の活動には向いていないんです。なぜなら助成金を申請する為には、公演本番からかなり手前の段階でその予定を決めなくちゃならないでしょ。でも唐ゼミ★は、ひとつの公演の結果から次の公演の内容を決めるというスタイルをとっていますから、無理なんです。まだ駆け出しの僕らにはこのやり方が一番健全だと思うので、助成金に頼ることなく、なんとか公演資金を捻出する方法を考えださなければなりません。
【注1】
唐ゼミの学外公演は、このほか、横浜みなとみらい、沢渡公園、吉浜橋、新宿、など各地でおこなわれている。 【注2】 劇場で渡されるチラシの束に、自分たちの公演チラシを挟み込むこと。大切なプレス作業(広報活動)だ。通常は公演初日の昼間、あるいは前日の昼間などに、チラシを持って先方の劇場に出向き、手作業で一枚ずつ挟み込んでゆく。チラシを何枚用意していけばいいか、何時にどこに集合すればいいかは、早いうちに相手の劇団に確認を取っておこう。もちろん、挟み込みをさせてもらえるかどうかは、相手方の好意によるものなので、可能かどうかも含めて、丁寧に頼むようにするのが礼儀である。 【注3】 3ページの記事、「プレスリリースのつくり方」を参照のこと。また、プレスリリースは自分たちの公演や展覧会の記事を掲載してほしい雑誌やミニコミ誌の住所を調べ(奥付けにたいてい記載がある)、可能なら電話をして担当者名を聞き、郵送または持参する。マスコミの人は総じて多忙なので持参する場合はアポイントをとることが望ましい。 【注4】 アートの実務には、劇場との契約や、出演者との交渉あるいは取り決め、稽古場の維持管理などなど、作業内容が比較的はっきり見定められるもののほかに、ビジネスライクだけでは片づけられない、「人との出会い」のようなヒューマンな営為が重要な要素としてある。演劇をはじめとした文化活動において、結局すべての作業の根っこは「人と人のかかわり合い」にあるのだ。誰かと知り合うこと、知り合った誰かときちんと会話をすること、このコミュニケーションなしには何事もあり得ないとこころえるべきだろう。そのためには、自分の身のまわりだけで通用する「閉じた言葉」だけでなく、生活も違えば風俗習慣、常識すら異なっているかもしれない「他人」と交流するための、「開かれた言葉」を身につけるよう日ごろから努力しなければならない。 (取材・執筆 岡野宏文) |