|
January 2008
元帥夫人という役を通じて、大人になって初めて味わえる
人生についてのしみじみした感覚を、 みなさん一人ひとりに共感していただけるように歌いたいと思います。 |
声楽家 ソプラノ
佐々木典子
3月に神奈川県民ホールが上演する、ベルリン発の新演出プロダクションによるR・シュトラウス作曲の最高傑作のオペラ「ばらの騎士」。人生で誰もが感じる恋の官能と陶酔、失われる若さへの哀切を甘美に描くこのオペラで、物語の中心となる元帥夫人役を歌う佐々木典子さんにお話を伺いました。
|
|
「ばらの騎士」は私がウィーンで体感してきた古き佳きオーストリアが感じられる作品で、私にとっては一番意味のある作品です。中でも元帥夫人という役は、年輪を重ねてきた大人の女性の気持ちが描かれているので、女性の歌手ならみんな憧れる役なのです。
ただ歌うには充分な声と体力が必要なので誰もが歌える訳ではなく、私も2003年の二期会での公演で最初に歌えたときは「これで人生終わっていい!」と思ったくらいです(笑)。
つくづく思うのはR・シュトラウスの歌のついている楽曲は、音楽に実に自然に言葉が乗っているということです。音楽は難しく聴こえるかもしれませんが、歌い手にとっては普段話す自然なドイツ語のようにすごく歌いやすい。それでいて彼が持っている洒落っ気が音楽に出てくるので、そこがとても素敵なのです。イタリア歌曲も日本語の歌もそうですが、歌には他の楽器と異なり言葉がつくわけですから、言葉がきれいに聴こえないとだめだと思います。彼の音楽に出会って、いかに言葉を音に乗せるかという大切な要素を改めて感じました。 難しくても?(笑)
「何でこんなに難しいんだろう!」って最初は思うんですけど、歌っているうちにはまってしまう(笑)。
普通はメロディがあってそれなりの和音の展開があるのですが、彼の音楽には意外性があって全く予想もしていないような和音に進むので、「あっ?!」と思うことがあるのです。それが快感に変わっていくときに、彼の音楽に魅了されていくんだなと思います。 それと、R・シュトラウスの曲はピアニッシモがすごく美しいのですが、彼のオーケストレーションは歌がピアニッシモでもきちんと聞こえるように書かれているのです。ただ楽器と歌との調和は練習を何回も重ねていって、ようやく本番で実現していくことなのです。
とにかく音楽がとても素敵で楽しいので、気軽に音楽を味わいにいらしてほしいです。初めての方にもR・シュトラウスの音楽の魅力に触れる手始めになる作品だと思います。
今回のホモキさんの新しい演出では、特に若い世代の方は「オペラって敷居が高いって思っていたけどおもしろいね」って感じるかもしれません。 それに「こんな人いるなあ」と、様々な年代の方が共感できる役がたくさん出てくる!(笑)。中でもやはり元帥夫人は特別な役ですから、女性だけでなく男性の方にも、大人になって初めて味わえる人生のしみじみした感覚を、みなさんの人生観の中で一人ひとりに共感していただけるよう大切に歌いたいと思います。
(聞き手・文:編集部 写真:幸田 森 取材協力・撮影協力:東京文化会館)
公演情報
神奈川県民ホール・びわ湖ホール共同制作 ベルリン・コーミッシェ・オーパー・プロダクション R.シュトラウス作曲 歌劇「ばらの騎士」全3幕(字幕付原語上演) ●指 揮:沼尻竜典 ●演 出:アンドレアス・ホモキ ●出 演: 元帥夫人 佐々木典子(22日)、岡坊久美子(23日) オックス男爵 佐藤泰弘(22日)、マルクス・ホロップ(23日) オクタヴィアン 林美智子(22日)、加納悦子(23日) ゾフィー 澤畑恵美(22日)、幸田浩子(23日) ほか ●管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団 ●合 唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、 二期会合唱団 児童合唱:赤い靴ジュニアコーラス ●日 時:平成20年3月22日(土)14時開演 23日(日) 13時開演 ●会 場:県民ホール大ホール ●料 金:特別席16,000円、A席12,000円、 B席9,000円、C席7,000円、 D席5,000円、E席3,000円、 学生2,000円、A席ペア21,600円 ●チケット・お問い合せ: 県民ホールチケットセンター 電話045-662-8866 音楽堂チケットセンター 電話045-263-2255 ●主催:神奈川県民ホール ※3月15日(土)に県民ホール小ホールにて第68回舞台芸術講座「歌劇『ばらの騎士』の魅力」を開催。詳しくはチケットセンターまで。 |
プロフィール佐々木 典子(声楽家 ソプラノ) Noriko SASAKI 武蔵野音楽大学卒業。ザルツブルクのモーツァルテウムに留学、オペラ科を首席で修了。1984年ウィーン国立歌劇場オペラ研修所に所属。86年同歌劇場にソリストとして本契約。ザルツブルグ、ウィーンはもとよりヨーロッパ各地の劇場においてオペラに出演。 国内でも二期会『魔笛』『真夏の夜の夢』『こうもり』『フィガロの結婚』などに出演し常に大喝采を浴びている。今や国内プロダクションの上演には主役として不可欠な存在としてその地位を確立。2000年第2回ホテルオークラ音楽賞受賞。2008年6月には鵜山仁演出「ナクソス島のアリアドネ」にプリマドンナ(アリアドネ)役で出演予定。 二期会会員 |