かながわアートプレス
September 2007
クリエーターズヴォイス
演奏には、もしかしたら〈集中力〉が一番大事かもしれません。
余計なことを考えていたら良い演奏はできません。
毎回毎回ほんとうに集中してやらないと、
お客様に音楽は伝わらないと思っています。
ゲスト写真1
ピアニスト

小菅 優

現在、ヨーロッパ、アメリカ、日本でもっとも注目を集めている若手ピアニストのひとり、小菅 優さん。
12月13日に神奈川県立音楽堂で開催されるリサイタルを前に、お話をうかがいました。
ピアノの勉強のために10歳で渡欧されて以来、ヨーロッパを拠点に活動していらっしゃいます。そもそもどうしてドイツに行かれたのですか。
ゲスト写真2  9歳のときに初めてドイツで演奏する機会があり、そこでいろいろな方との出会いがありました。同世代の子供たちと室内楽をやる機会もあって、それがとても楽しかったのです。それでドイツに行きたいと思うようになりました。なにしろむこうでは<自分を表現してよい><ひとりひとりが違っていて良いのだ>という雰囲気があって、そういう自由なところが自分に合っていたのだと思います。
 現在は日本を含め世界中でリサイタルやオーケストラとの共演など年間40回ほどの公演がありますが、リサイタルでは、挑戦だと思って新しいレパートリーを意識的に弾くようにしています。若い頃に身につけた音楽は、自分の血となり肉となって一生のものになると思いますし、それらの作品をこれから長い時間をかけて深めていきたいと思っているからです。

世界中から注目されてプレッシャーはありませんか。
 他人からのプレッシャーより自分自身に向けるプレッシャーのほうが強いかもしれません(笑)。
 音楽というのは、研究すればするほど奥が深くてなかなか満足できるということがありません。わたしはそれを満足できるレベルにもっていきたいのです。


休みの日は何をしていますか。
 旅行ですね。私は旅をするのがとても好きです。好奇心が旺盛なので、世界中を知りたいと思っています。
 普段は演奏をかねて旅行することが多いのですが、オーケストラとの共演のときにはリハーサルが3、4日ありますから、その合間をぬって街を観て歩くことができます。どこよりもヨーロッパが好きで、とくにパリやロンドンは演奏がなくても年中行っています。
 それから、(旅行へ行くほどではなくても)すこし時間ができたときには、室内楽をよくするようにしています。ピアノはオーケストラのような楽器といわれますが、室内楽を経験すると、他の楽器の音色が自分の引き出しに入ってきて、それによってピアノの音楽も膨らんでくるのです。

『天使の翼の先端が頬に触れた瞬間を感じさせるピアニシモ』(フランクフルト紙)などと評されていますが、特別な才能をもった演奏家として、なにか他人と違うところがあると感じていますか。もしくは使命感などはありますか
 音楽家は、たとえば宇宙飛行士と比べたら人に与えられる影響は小さいかもしれません。ましてや自分の力は世界の中では小さいけれども、音楽でも人を救うことができたらいいなあと思っています。
 世界には貧しい人もいて、その日の食べるものにも困っている人もいます。私は演奏することしかできないけれども、それだけで満足するのではなくて、そういう困っている人にも手を差し伸べることができるような人になりたいと思っています。そしてそのために努力をしたいと思っています。
 この間アフリカのナイジェリアに演奏に行きました。そのときに大使館の方に小さな村にも案内してもらいましたが、いろいろな面で、私は恵まれた環境にあるのだなと思いました。その恵まれた環境をよいほうに使えないかなと思っています。

音楽堂でのリサイタルに期待が膨らみます。最後にお客さまへのメッセージをどうぞ。
 私はこれまでドイツの作品と結び付けられることが多かったのですが、今回は、前半にフランスの作品、後半にはスペインを代表する3人の作曲家の作品を取り上げます。これはわたしの新しい挑戦ですから、ぜひ聴いていただきたいです。ラヴェルでは、フランス印象派の絵を思い浮かべてほしいですし、アルベニス、グラナドス、ファリャの作品では、スペインの人や風土、においのようなものを感じていただけたら嬉しいです。音楽を演奏することには自分自身の人生が大きく関わっています。お客さまも、ひとりひとり違う人生を生きて、違うパーソナリティをもっていますから、みなさん思い思いに聴いていただきたいと思います。  
 
(神奈川県立音楽堂にて 聞き手:神奈川県立音楽堂 写真:幸田 森)

公演情報
小菅 優ピアノリサイタル
  • プログラム
  • ラヴェル/ソナチネ、夜のガスパール 
    アルベニス/ナバーラ グラナドス/ゴイェスカスより 「嘆き、またはマハと夜うぐいす」「愛と死(バラード)」 ファリャ/火祭りの踊り(バレエ「恋は魔術師」より)、ポール・デュカスの墓碑銘のための賛歌、アン ダルシア幻想曲
  • 日時 2007年12月13日(木)19:00開演
  • 会場 神奈川県立音楽堂
  • 料金 一般4,000円 学生3,500円
  • チケット・お問い合わせ
    音楽堂チケットセンター  045-263-2255
    県民ホールチケットセンター 045-662-8866
  • 主催 神奈川県立音楽堂
ゲスト写真3 プロフィール
小菅 優(ピアニスト)
Yu KOSUGE
1983年東京に生まれ、10歳でドイツに渡る。幼い頃よりヨーロッパで音楽教育を受け、2004年にモーツァルテウム音楽院を卒業。その高度なテクニックと美しい音色、深い楽曲理解とみずみずしい感性で、いま最も注目を集めている若手ピアニストのひとりである。とくに「ダイナミックな音楽表現」(ハノーファー紙)や「天使の翼の先端が頬に触れた瞬間を感じさせるピアニシモ」(フランクフルト紙)などの批評を得て、ヨーロッパの聴衆から熱狂的な支持を得ている。モーツァルト生誕250年にわいた昨年は、その生誕の地であるザルツブルク音楽祭に日本人ピアニストとして二人めとなるリサイタルデビューを果たし、大成功を収めた。CDに「リスト:超絶技巧練習曲集」「ショパン:24の前奏曲/前奏曲第25番&第26番/夜想曲第20番嬰ハ短調」「モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番&第21番」「ライヴ・アット・カーネギー・ホール」「ファンタジー」などがある。

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