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November 2006
ソロダンサーというのは一人ですべてを背負わなければならない。
ですから、あなた自身がとても大切だということをまず、わかって欲しい、 そこからはじめます。 |
舞踏家・演出家
大野慶人
様々な芸術文化を融合し、神奈川から創造・発信するArts Fusionシリーズ。
5回目の開催となる今年は、世界のダンスシーンに大きな影響を与えた舞踏家大野一雄氏の生誕100歳を記念し、氏と交流のあった舞踊家を招聘してのガラ公演を開催する。 その総合演出を務める大野一雄舞踏研究所長の大野慶人氏に、稽古場で話をきいた。 |
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ここは45年前からずっと稽古場として使っています。周りにまだ何もなかったときから。大野一雄が先生をしていた横浜の捜真女学校の校舎が古くなって、建て替えるときにその木材をもらってきて作りました。梁や柱、窓枠もすべてそこからもらってきたものです。時間というのは大切です。長くそこにあるということが大切なのです。そういったものでつくられた場所のもつ力というのもありますね。
最近も県民ホールでイタリアの歌劇場のオペラがあったと思いますが、それに出演している歌手の方が大野一雄の本に感動したといってここを尋ねてこられました。いろいろ説明をしながら、稽古を見せてあげたら感動して泣いてしまった。その後、大野一雄の前でアリアを歌ってくれました。素晴らしいアリアでした。その日から1日置いて、またここに見えて、そのときは私にアリアについてどう思いますか、と聞くのです。私は美しい建物もそれを支えている土台がすごいでしょう、その美しい建物がアリアです、そのアリアに至るまでの、退屈にも思える伏線が大切なのですと言いました。アリアだけでは成り立ちません。大野一雄も最後の踊りはアリアですが、そこに至るまでに空気を作るところからはじめて踊りを作っていく、そんな話をしました。 世界中から、今でも大野一雄の著作や踊りに感動してここにはいろいろな人が訪れます。稽古もいろいろな国の方が参加されます。 ※フィレンツェ歌劇場 オペラ「トゥーランドット」 9月17日公演に出演(合唱団)していたコンスエロ・チェッラーイのこと。
昨日の稽古は、テーマが「木の成長」でした。木は目に見える早さで成長するわけではなく、それでもいつの間にか春が来て芽吹き、夏に葉が茂る、大きく育っている。それと同じで、踊りも、目に見える、人に見せる動きではだめだ、目には見えないまま、いつの間にか成長していた、という動きを研究してみよう、と。例えば、小学生が1年生から6年生になるまで、嬉しいことや悲しいこと悔しいことなどがたくさんある。それは今の6年生の姿に表れているわけではないけれど、それでもいろいろなことが面影のように身体には残っている、というようなことです。この稽古場の基本であり信念は、まず初めに一人ひとりが大切だ、ということです。大野一雄はソロダンサーです。ソロダンサーというのは一人ですべてを背負わなければならない。ですから、あなた自身がとても大切だということをまず、わかって欲しい、そこからはじめます。たいていの人は、何ももっていないのではなく、むしろありすぎる。そこから無駄なものを消す作業をしていく。そうすると、誰でもない誰にも似ていない、あなた自身が浮かび上がります。 どんな公演になるのでしょう
一人ひとりを一品として、その人の一番の時間を10分間持ってきて欲しいとお願いしています。今の時代、個というものがなくなっています。そういう時代にこそ、一人ひとりの、かけがえのない大切な時間を見てもらうことが大切なのです。天児さんも普段は山海塾というグループで活動していますが、今回はソロとして踊ってもらいます。白塗りもしないと思います。
他の出演者では、カルラ・フラッチさんはミラノ・スカラ座のプリマだった人で、今は70歳を超えローマオペラ座の芸術監督をしていますが、その人に舞踏を押し付けるわけではありません。彼女をいかにプリマとして舞台上に復活させるか、イタリアでは「大切なダンサー」と呼ばれて宝にされている、そういうかけがえのない人の踊り、その真髄を見せてもらおうと思います。 実績を持った人たちの真髄がきちんと現れるよう、私は交通整理をしようと思っています。無名の人も有名な人も、それぞれソロで、ある時間を引き受けてもらうということです。未来を感じさせる公演にしなければなりません。基本的に、一人1公演に出演していただくよう交渉中です。1日だけだと、その日咲いた花になりますが、2日間やると作品になってしまいます。ですから2日間公演はありますが、同じ公演はありません。2日間、出演する方は違います。全部見たい人は2日間来てください(笑)。
10月に大野一雄が100歳を迎えます。今までお会いしたり、ジャンルを越えてお付き合いのあった方々と、ぜひ生きている間に出会わせてあげたい。例えば、先日もジャズの演奏家の方と都内でお会いしましたが、以前この方は、大野一雄の公演があると、次々に知り合いに声をかけてくださって、チケットがどんどん売れていきました。今までそういう方々に支えていただいて「本当にありがとうございました」と本人から、ぜひお伝えしたいのです。
皆さんも公演をどうぞ楽しみにお待ちください。 (写真:幸田森 2006年9月 大野一雄舞踏研究所にて)
公演情報
Arts Fusion 2006 in KANAGAWA Part1 大野一雄100歳の年 ガラ公演「百花繚乱」 平成19年1月27日19時開演、28日15時開演 神奈川県立青少年センター ホール 総合演出:大野慶人 出演:(27日)麿赤兒、上杉満代、田中泯 ほか 出演:(28日)カルラ・フラッチ、天児牛大、高井富子 ほか 料金:全席指定 一般 前売3,000円、当日3,500円 料金:全席指定 学生 前売2,500円、当日3,000円 主催:神奈川県、アーツ・フュージョン開催実行委員会、 主催:大野一雄舞踏研究所、(財)自治総合センター 問合せ:神奈川県県民部文化課 045-210-3808 問合せ:大野一雄舞踊研究所 045-381-2333 チケット:県民ホールチケットセンター 045-662-8866 |
プロフィール大野慶人(おおのよしと 舞踏家、演出家) 1938年東京生まれ。横浜在住。1959年大野一雄モダンダンス公演「老人と海」でデビュー。同年土方巽の「禁色」で少年役を演じた。以後、アルトー館、暗黒舞踏派公演に参加。1969年初のソロ公演を行うが、その後舞台活動を一時中断。1985年「死海」で大野一雄と競演してカムバックした。1986年以降は大野一雄の全作品を演出。1998年、歌舞伎研究家・郡司正勝氏の遺稿をもとにソロ作品「ドリアン・グレイ最後の肖像」を上演。 |